代表ブログ

ジェットスタージャパンで何が起きているのか?

社会保険労務士でかつ大学で航空ビジネスの科目を担当している私にとって、一部の労働組合のストライキにより現に欠航が発生している航空会社の「ジェットスタージャパン」の状況推移が最近の関心事の一つとなっている。折しも航空の旅客流動が最も活発になる年末年始の期間である。

ジェットスタージャパン(以下「会社」)とその一部労働組合との間で何が起きているのか、私なりに可能な範囲で調べて見た。

まず今回ストライキを実施しているのは、同社のパイロットと客室乗務員のうち、一部が所属する労働組合「ジェットスター・クルー・アソシエーション(JCA)」に所属するパイロットと客室乗務員。同組合の正確な組合員数は不明であるが、現段階で約20名程度と思われる(但し、その後増えている可能性もあり)。いずれにしても今のところ同社の全従業員の過半数には達していないようである。

そもそもJCA側は何を問題として会社と争っているのか。

JCA側が問題にしているのは、概ね以下3点

①未払い残業代

②通勤手当の支給

③組合掲示板の設置

とりわけ今回ストライキを決行に至った最大の要因は「①未払い残業代」である。

中でもJCA側が問題にしているのは、「法定内残業」の残業時間。今回ストライキを決行に至った最大のポイントと私は見ている。

「法定内残業」の時間外労働手当は、「法定外残業」とは異なり、使用者(会社)に25%以上とされている割増賃金を支払う法的な義務はない。但し割増のつかない通常の賃金分については当然「法定内残業」であっても支払い義務が生じることとなる。

「法定内残業」とは「所定労働時間」を超え「法定労働時間」に達するまでの時間のことを指す。

同社はこれまで、「法定内残業」の算定の前提となる「所定内労働時間」の考え方がしっかり確立されておらず、その点において会社側とJCA側との間で大きな溝があったのではないかと私は推察している。

「所定内労働時間」の考え方に相違があれば、当然のことながら残業(法定内時間外労働)時間、更にそれをベースに算出される残業(法定内時間外労働)手当にも乖離が生じることになる。

JCA側はそのことを「未払い残業代」と表現している。

現在ストライキにより多くの欠航便が発生していることは事実である。更に2024年1月7日までこのストライキが予定されている。

この事態の収拾を図るべく、会社側は12月28日国の中央労働委員会にあっせんを申し入れた。

ストライキを始めとした労働組合の争議行為は憲法でも保障された労働者の正当な行為である。一方、公共交通機関として「利用者輸送」という高い社会的使命を背負っていることにも目を背けることはできない。

そういう意味では、会社側、JCA側双方に極めて高度なバランス感覚が求められる。

いずれにしても、一日でも早く現下の事態が収拾されることを願いたい。