社会保険料を滞納して、延滞金を課せられてしまったある会社のお話です。ちなみにその会社は当オフィスの顧問先様ではありません。
日本年金機構は納付期限までに社会保険料(厚生年金保険料等)の納付が確認できない場合、事業主に督促状を送付してきます。
督促状の指定する期日までに納付がなされなかった場合、その指定する期日の翌日より延滞金が発生することになります。
延滞金は、本来の納付期限の翌日から、納付の日の前日までの日数に応じ、保険料額(保険料額に1,000円未満の端数があるときは、その端数を切捨て)に一定の割合を乗じて計算されます。
ここで注意しなければならないことは、延滞金の計算上の起源日は「督促状の指定期限の翌日」ではなく、「本来の納付期限の翌日」であるということです。
また、現時点で「その一定の割合」とは、納付期限の翌日から3カ月を経過する日までは「2.4%」、更に納付期限の翌日から3カ月を経過する日の翌日以降はなんと「8.7%」といきなり跳ね上がります。
延滞金は滞納者へのペナルティ的要素があるとは言え、この低金利時代において事業主にとってかなりのインパクトです。
その延滞金を課せられた会社は、ある時点まではきちんと当初の納付期限までに支払っていたものの次第に社会保険料を滞納するようになりました。それでも最初は督促状の納付期限までには支払っていたことから延滞金は課せられることはありませんでした。ところが徐々に「督促状」が送られてくることが常態化し、督促状への警戒感や危機感が薄れ、督促状の指定期限までの納付さえ怠るようになり、そしてついに延滞金が課せられることになったのです。
幸いにしてこの会社は決して資金繰りが厳しかったわけではないことから、直ちに延滞金も含め納付したことでこれ以上の事態の悪化は防ぐことができました。それ以降この会社は本来の納付期限までにきちんと納付するようになったとのことです。
ここでの教訓は「決して単なる社会保険料の滞納と侮ってはいけない」ということです。
社会保険料の滞納は企業を「負のスパイラル」へと陥れます。
具体的に「負のスパイラル」とは以下のことが考えられます。
①高額の延滞金が課せられる
⇒本来支払わなくても良い余計な費用が発生することになる。
➁従業員の士気が低下する
⇒督促状が頻繁に届く状況を従業員が目の当たりにすることで、従業員の士気の低下を招くことになる。更に企業の先行きを案じた従業員が大量に退職する可能性がある。
③金融機関からの融資に悪影響がある
⇒融資元に滞納している事実が知れてしまうと以降の融資が止められる可能性もあり、その場合資金繰りの大幅な悪化を招くことに繋がる。
④取引先から信用を失う
⇒悪いうわさはあっという間に広がるもので、そのようなことが取引先の耳に入ってしまうと、信用を失い以降の取引にも悪影響がでる可能性がある。
今回紹介したこの会社の滞納については、資金繰りの悪化が原因ではなかったことから、比較的傷は浅かったと言えますが、資金繰り事由で納付すべき社会保険料を期限までに用意できず、結果滞納せざるを得ない企業も少なからず存在していることも事実です。
特にここ最近の社会保険料の負担率改定や社会保険適用者の拡大等もあり、社会保険料が企業に重い負担としてのしかかっています。このことは経営者の気持ちが多少なりとも理解できる一社会保険労務士として心を痛める場面も多々あります。
それでは、資金繰りが理由で実際社会保険料を納付期限まで支払うことが出来ない場合は、どうしたらいいのでしょうか?
その場合は、納付期限前であってもまずは速やかに日本年金機構(管轄の年金事務所)に相談されることをお勧めします。状況によっては、納付猶予や分納などの対応を図ってもらえる場合があるからです。
くれぐれも「払えないものは払いたくとも払えない」などと、年金事務所等に相談することなくただ放置することは最悪の結果を招くことになりますので、それだけは絶対に避けていただきたいと切に感じています。